インプラント治療介入の決め手はあるのか?
2025/08/14
インプラントにも不得意なことがあります
インプラント治療を検討している皆さん、こんにちは!
歯の治療法として注目されているインプラントについて、知っておきたい大切なポイントをお話ししたいと思います。
欠損した歯の治療法といえば、昔からあるブリッジと、最新のインプラントが二大選択肢ですよね。どちらも優れた治療法ですが、それぞれの特徴をよく理解して、自分に合った治療を選ぶことが何よりも大切です。 まず、ブリッジについて見てみましょう。
歯科先進国では、長期間にわたる高い成功率が報告されています。また、ある研究では、ブリッジの支台歯になったことで、歯の生存予後が改善したという驚きの結果も出ています。これは、治療に高額な費用をかけた分、患者さんがしっかりセルフケアをするようになったからではないかと考えられています。つまり、ブリッジの適合精度以上に、歯周組織や口腔衛生状態を良好に保つことが、長期的な成功の鍵となるわけです。
次に、インプラントはどうでしょうか。近代インプラント学の祖であるブローネマルク博士らの研究では、15年間の生存率は上顎で81%、下顎で91%と非常に高いことが示されています。最近では、インプラントの形状や表面の改良により、10年程度の生存率が95%以上にまで向上しています。しかし、インプラント治療に全くトラブルがなかった患者さんは、5年間の生存率が95.6%であるにもかかわらず、全体の66.4%にとどまる※1という報告もあります。 ここで重要なのが、1)「歯周病」と「インプラント」の関係と2)「失活歯」と「インプラント」の関係です。
1)「歯周病」と「インプラント」の関係
過去に歯周病を患ったことがある患者さんは、インプラント周囲炎にもなりやすいと考えられています。
最悪の場合、歯周病が進行したのと同じスピードで、インプラント周囲の組織が破壊されてしまうことも想定しなければなりません。
では、どうすれば良いのでしょうか?歯周病の進行は、適切な歯周治療によって進行を遅らせることが可能です。もし将来的に抜歯が必要になるとしても、抜歯とインプラント治療をできる限り遅らせるメリットは大きいのです。図のように特に若い人ほど歯周病の進行を食い止め、インプラント埋入のタイミングを可能な限り遅らせることが重要になります。
2)「失活歯」と「インプラント」の関係
過去に根の治療をした歯がインプラント予定部位の隣在や対合にある患者さんは、それらの歯の寿命がどれほどなのかについて議論しなければなりません。
根尖性歯周炎に対する成功率は計算上96~99%※2ですが、実際の臨床では様々な要因で失活歯は抜歯へと至っています。すなわち、それら様々な要因で抜歯へ至る可能性を否定しえない以上、失活歯隣在または失活歯対合へのインプラント治療は「費用対効果」と「天然歯保存の可能性」というキーワードが欠かせません。
一般的にインプラント治療はブリッジよりも費用・治療期間ともに負担が大きいとされています。他方、ブリッジの支台とされる歯や欠損部位の対合歯が失活歯であったとしても天然歯保存の可能性は否定できません。ましてや、削合された歯が隣在に存在する以上、インプラント治療を早急に行うよりはブリッジ治療を選択した方が費用面・治療期間ともに少ないと考えることもできます。
インプラント治療とブリッジ治療の優位性を論ずる場合、「インプラント治療でしか主訴を解決できない」とする特段の理由がない限りにおいては、「インプラント治療をするメリットが大きい」場合にインプラント治療が選択されます。
例えば、咬合に問題がなく、一度も歯科治療を受けたことがない歯が隣在する部位へのインプラント治療や、インプラント治療でしか固定性のブリッジができない場合、入れ歯を回避したい場合にはインプラント治療が積極的に提示されるでしょう。
結論
インプラント治療は、完全無欠の治療とはほど遠い医療です。ましてや、インプラント治療後の合併症に対してはガイドラインを含め治療方法も確立しておらず、論文上の高い成功率(生存率)だけを鵜呑みにするわけにはいかないのが現実です。
我が国においては、インプラント治療後のトラブル対応も保険診療の枠外に置かれている点があるなどインプラント治療を選択した結果、患者さんの不利益となっている可能性に目を向けなければいけません。
「欠損したらすぐにインプラント」と安易に決めるのではなく、ブリッジとインプラント、両方の特性をしっかり理解し、歯周病の管理や失活歯の予後についての検討を徹底した上で、最適なタイミングで治療を選択することが何よりも大切なのです。そうすることで、インプラントをより長く安定的に、治療効果を最大化しながら、健康に使い続けることができるでしょう。
※1 Pjetursson BEら A systematic review of the survival and complication rates of implant-supported fixed dental prostheses(FDPs)after a mean observation period of at least 5years.Clin Oral Implants Res 2012;23 Suppl 6:22-38
※2 FriedmanS Expected outcomes in the prevention and treatment of apical periodontitis.In :φrstavik D,らEssential endodontology:Prevention and treatment of apical periodontitis.2nd. Oxford:Munksgaard International,2007 SetzerFCら Outcome of endodontic surgery:A meta-analysis of the literature. Part 1:Comparison of traditional root-end surgery and endodontic microsurgery.J Endod 2010;36:1757-1765



